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糸を出さなくなった蜘蛛を見てて。
かれこれ3週間にもなろうか?うちの洗面所の天井に同じ蜘蛛がずっと滞在し続けていた!

彼は(あるいは彼女?とりあえず彼という事にしておく)洗面所の天井に這いつくばり、
特に糸を出して巣を作るでも無く、ただひたすら這いつくばっていた!

見上げる度に数センチから十数センチ居場所を移動してるだけ。

家に居る蜘蛛は害虫を食べてくれるから殺さないと言うのが妻の親からも僕の親からも言い伝えられて来た(という程オーバーな話じゃないけど、、、)不文律みたいなものが染み付いているので、僕たちは天井に這いつくばるその蜘蛛を見守るでもなく、なんとなく放置していた!

そのうち不思議な愛着にも似た感情が芽生え出し、妻が洗面所に行く度に「この子まだ居るよ〜!」
と、蜘蛛の動向が気になる日々を送っていました!

そんな日々の中、僕の母方の祖母が亡くなり僕たち夫婦は急遽大阪に跳ぶことになった。

仮通夜、通夜、葬儀で丸々三日間家を空けて帰宅しても、その蜘蛛はまだうちの洗面所の天井に這いつくばり、
糸を出して巣を作るでも無く静かにわずかな移動を繰り返しているだけだった。

彼が(というのはその寡黙に映る蜘蛛の事)何を思い、何を食し、巣も作らずに日々を暮らしているのか?
勿論僕たちには知る由もない。

ただ、彼は僕たち夫婦の三日間の不在とは全く関係のない次元の世界で天井に這いつくばり、僕たちの視点とは逆さまの視界に映る世界の中で恐らくは何かを思い、何かを求めながら過ごしていたんだろう。
恐らく、、、。

大切な家族の1人を失った僕がこれから何を求めて暮らして行くかなんて問題は、彼にとっては与り知るべくもないどうでもいいことなのだろう!

ただ依然として妻は「まだこの子居るね!」
と洗面所の天井を見上げる度に呟くし、僕も彼を見上げながら、なぜ巣も作らずによりによってこんな窮屈な場所に居を定めているのか、不思議に感じながら日々の渡世上のしがらみに翻弄されつつロックンロールしたいた!

虫を食べるったて肝心の虫はあまり居ないし、その虫を捕獲する為の蜘蛛の巣さえ作らない!(あの幾何学的で幻想的で、しかし鬱陶しい蜘蛛の巣!)

風呂場に隣接する洗面所の湿度の高いろくでもない天井で、おもしろおかしくもない模様のクロスの上を僅かに移動しながら日々を送っている彼の姿は、日が経つにつれて何かしらの物悲しさを帯びて映るようになってきた。

余計なお世話だけど、「お前はなにが面白くてそんなろくでもない場所で逆さまの世界を眺め続けてるんだ?」
と、語り掛けたかった!

そして今日、夕刻に洗面所の天井を見上げると彼の姿がなかった!

少し寂しくもあったけど、やっと新しく居を定める場所を見つけたのかな?
と、少しホッとした。


でもその数十秒後、僕の予想は大きく外れていた事に気づく!

床を掃除しようとクイックルワイパーを手に見下ろすと、彼はいつもと逆さまの視界の中、つまり僕たちが普段眺めている視界の中で床に這いつくばっていた。

丁度彼が逆さまの世界の中で数週間過ごしていた真下に位置する床の上に、、、、。


思わず、「おい、どうした?」って尋ねながら人差し指でほんの少し彼を小突いてみた。

すると僅かに反応はするけど、もう逃げる事も出来ない程に彼は衰弱していた!

小指の腹をそっとあてがうと、ゆっくりゆっくり僕の右手の小指に昇り出した。

そう、彼はこの数週間既に死にかけていたのだ。

疲れ果てて巣を作る気力も無くし、虫を捕獲する体力も失い、ただひたすらろくでもない天井に這いつくばり、その全てが終焉を迎えるときが来るのを静かに待っていたんだ。

彼とはそんなに深い義理も無ければ友情も育まれていない、、、。

だから、僕の右手の手のひらの上でじっとしている彼を、そっと庭の芝生のうえに落とした。

芝生の上で彼は何処にいくべきか困惑しているように見えた。

少し歩みを進めては止まり、
また方向を少し変え歩みを進めては止まり、、、。

しばらく見届けてはいたけど、その先の彼の物語は知らない。

彼がうちの芝生のどこか片隅でひっそりとその生涯を閉じるのか?

あるいは庭の蟻やその他の害虫と一悶着あって、壮絶な最期を迎えたのか。

はたまた、芝生の中で奇跡的な何かに遭遇し、信じられない程の生命力で蘇生したのか?
(全くあり得ない話でもないと思う!)

いずれにせよ、僕たちのうちの洗面所の天井から一匹の蜘蛛が消滅した。

妻はまだ帰宅してないから、そのことに対してどういう感想を持つのかは解らない。

彼が芝生の上に落とされてどう感じたのかも解らない。

あるいは洗面所の床の上でゆっくり最期の時間を過ごしたかったのかも知れない、、、。

でも、僕と蜘蛛という関係性の中で、僕はベストを尽くしたつもりだ。

床に這いつくばる彼をテッシュにくるんで燃えるゴミの日に回収されていたのかも知れないし。

彼が数週間洗面所の天井で過ごしていなくて、例えばこのブログを書いているパソコンがあるデスクの上に突如出現していたら、僕は無慈悲にも何の迷いも無くテッシュにくるんで捨てていたかも知れない。

そんなこっち側の気まぐれに彼ら(蜘蛛やその他の虫達)の運命が委ねられている事を知って、彼らはもの凄く憤慨するかも知れない。

それも運命だと悟りきっているのかも知れない。

少なくとも僕ら夫婦はこの数週間、洗面所の天井に生息する蜘蛛に気まぐれな愛着を感じていた。

きっと彼のことはこの先長く覚えていないと思う。
(結局その蜘蛛が彼と呼ぶべきなのか、彼女と呼ぶべきなのかも知らないままに)

多分、間違いなく。
きっとすぐ忘れる。



でも、祖母の事はずっと忘れない。

人間ってそんな生き物なんだと思う。


そんなことを思う時、ロックンロールが優しく響くように感じる。

だからロックンロールが大好きなんだと思う。

        

                               
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by maruokazumasa | 2014-04-21 20:39